衆197-1.消費税の使い道を大きく変える決断をする場合の内閣の姿勢に関する質問主意書

第197回国会 1 消費税の使い道を大きく変える決断をする場合の内閣の姿勢に関する質問主意書

提出者:逢坂誠二議員
※読みやすくするために改行や括弧、数字の修正を行なっております

 

平成30年10月15日の臨時閣議安倍総理は、
「消費税率については法律で定められた通り、平成31年10月1日に現行の8%から10%に2%引き上げる予定です」
「今回の引上げ幅は2%ですが、前回の3%引上げの経験をいかし、あらゆる施策を総動員し、経済に影響を及ぼさないよう、全力で対応します。第一に、消費税率引上げ分の使い道を変更し、2%の引上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元します」
(「30総理発言」という。)などと発言した。

 

もっとも、平成29年9月25日の記者会見で安倍総理は、
「つけを未来の世代に回すようなことがあってはならない。人づくり革命を力強く進めていくためには、その安定財源として、再来年十月に予定される消費税率10%への引上げによる財源を活用しなければならないと、私は判断いたしました。」
「2%の引上げにより5兆円強の税収となります。現在の予定では、この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています。」
「この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。」
「この消費税の使い道を私は思い切って変えたい。子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランスよく充当し、あわせて財政再建も確実に実現する」
と発言し、衆議院を解散することの妥当性を説明している。

 

併せて、
「これまでお約束をしていた消費税の使い道を思い切って大きく変えるという決断をいたしました」
「これは国民の皆様にお約束をしていたことでもあります。」
「『代表なくして課税なし』。税こそ民主主義であり、国民生活に大きな影響を与える。税制においてこれまで約束した使い道を見直すとの大きな決断をする以上、国民の皆様にその信を問わなければならない。その判断を仰がなければならない。こう決心をいたしました」
(「29総理発言」という。)とも発言している。

 

これらの発言を踏まえ、以下質問する。

 

 

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【質問】

1.「29総理発言」では、消費税の使い道を大きく変える決断をする場合、「国民の皆様にその信を問わなければならない」と示されているが、消費税の使い道を変える場合、国民の信を問わなければならないという姿勢は現時点でも安倍政権では維持されているのか。見解如何。

 

2.「29総理発言」で「『代表なくして課税なし』。税こそ民主主義であり、国民生活に大きな影響を与える」との見解を示し、消費税の使い道を変える場合に国民の信を問う姿勢を表明しているにも関わらず、「30総理発言」では「消費税率引上げ分の使い道を変更し、2%の引上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元します」と明言するものの、これまで安倍総理は国民の信を問う姿勢を明らかにしていない。「29総理発言」と「30総理発言」は整合性を持たないのではないか。安倍総理の見解如何。

 

3.「30総理発言」でいう「消費税率引上げ分の使い道を変更し、2%の引上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元」することは、「国民生活に大きな影響を与える」ものではなく、「代表なくして課税」の内容を変更できる程度のものと考えているのか。政府の見解如何。

 

4.「29総理発言」でいう「現在の予定では、この税収の5分の1だけを社会保障の充実に使い、残りの5分の4である4兆円余りは借金の返済に使うこととなっています。この考え方は、消費税を5%から10%へと引き上げる際の前提であり、国民の皆様にお約束していたことであります。この消費税の使い道を私は思い切って変えたい。子育て世代への投資と社会保障の安定化とにバランスよく充当」することは、総選挙を経て安倍政権に委ねられた政策変更と見ることができる。他方、「30総理発言」でいう「消費税率引上げ分の使い道を変更し、2%の引上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元」することはこれを明確に変更するもので、昨年の総選挙の内容を一部否定するものである。これは、安倍総理自らが衆議院を解散し、民意を問うた昨年の総選挙を蔑ろにするものではないか。安倍総理の見解如何。

 

 

【答弁】1~4までについて

 

平成29年9月25日の記者会見において、安倍内閣総理大臣は「子育て世代への投資を拡充するため、これまでお約束をしていた消費税の使い道を思い切って大きく変えるという決断をいたしました。」と述べるとともに、消費税率2パーセント引上げによる増収分のうち、社会保障の安定化に充当する規模と、社会保障の充実及びこの消費税の使途見直しによる新たな政策に充当する規模との関係については、「おおむね半々ということになるのだろうと思います」と述べており、この発言に沿って、平成30年10月15日の臨時閣議において「消費税率引上げ分の使い道を変更し、2%の引上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元」すると述べたものである。

 

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【質問】

5.「30総理発言」でいう「消費税率引上げ分の使い道を変更し、2%の引上げによる税収のうち半分を国民の皆さんに還元します」との方針は、財務省のホームページの「税制について考えてみよう」で示されるような「年金、医療などの社会保障・福祉や、水道、道路などの社会資本整備、教育や警察、消防、防衛といった公的サービスは、私たちの暮らしに欠かせないものですが、その提供には費用がかかります。税は、このような公的サービスの費用を賄うものですが、みんなが互いに支え合い、共によりよい社会を作っていくため、この費用を広く公平に分かち合うことが必要」という原則に反するものである。
すなわち、税は、「課税の十分性」、「課税の明確性」などが求められるが(ワグナーの租税九原則)、国民に還元するために徴税するならば、「課税の十分性」や「課税の明確性」があるとは言えない。
それならばそもそもその課税をしなければ良いのであり、政府に徴税コストが発生するのみである。政府は、「税収のうち半分を国民の皆さんに還元」するような税が、十分性を持ち、明確な課税理由を持っていると考えるのか。公的サービスの費用を賄うことのないただ国民に還元されるための目的の税は合理性に欠けるのではないか。政府の見解如何。

 

【答弁】5について

 

お尋ねの「国民に還元するために徴税するならば、「課税の十分性」や「課税の明確性」があるとは言えない」の意味するところが必ずしも明らかではないが、平成31年10月1日に予定されている消費税率の引上げは、全世代型社会保障の構築に向け、少子化対策社会保障に対する安定財源を確保する等の観点から行うものであり、「合理性に欠ける」との御指摘は当たらない。

 

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楽しく読めるかもしれない解説

1~4は総理の消費税の使い道に関する2回の発言について、齟齬があるんじゃないですか?この発言とこの発言で言ってること変わってませんか?そもそもこの発言おかしくないですか?っていう質問です。

各発言についていちいち「29総理発言」「30総理発言」と名前を付けているところが面白ポイント。

『代表なくして課税なし』が分からなかったのですが、アメリカ独立戦争のときのスローガンだそうですね。「人民が自ら選出した代議士の承認無しに政府が人民を課税することは不当であるという理念」とあります。

代表なくして課税なし - Wikipedia

 29総理発言では「『代表なくして課税なし』という言葉があるように、消費税の使い道を変えるときには国民の皆様に信を問わなければならない(要は選挙をしなければならない)」と言っているにも関わらず、30総理発言で「消費税の使い道を思い切って変えまーす!」って言っちゃってる、それなのに選挙をやる様子がないようですが、どういうことですか?っていう質問をしています。

これは「消費税の使い道変えるなら選挙やれよ」ってことではなく、「そもそもあの2017年(平成29年)に行われた衆議院議員選挙に正当性はあったのですか?」という意味合いと思われます。

 

5はちょっと難しいですが、とりあえずリンクを貼ってみます。

www.mof.go.jp

note.masm.jp

特に財務省のページを見てみると冒頭「税は社会の会費です」とあるので、「国民にただただ還元するために税(会費)を徴収するという考え方を持っているとしたらそれおかしいですよね?」という意味かなぁと思いました。

詳しい方の解説を求めます!

 

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【参考】
 
逢坂誠二の徒然日記:平成29年9月26日より

消費税の使い道の見直しについて
「国民の信を問いたい」と言う。

子育てなどに
消費増税分を使うことに、
異論は少ない。

国会でほとんど論戦もない、
しかも異論もないことをあえて争点にする。

この頓珍漢な姿を見ていると、
間抜けなことだと感ずる。

辛辣…